菊は毎年花を咲かせる宿根草。
同じ場所に植えっぱなしだと、草丈がひょろひょろと伸びてきて下葉が枯れたり、花付きが悪くなったりして倒れてしまいます。
見栄えはあまり綺麗な風景ではありませんし、風通しも悪く病害虫になりやすいです。
菊は植えっぱなしにせずに暖かくなったら、摘心したり株分けしたりして植え替えするなど少し手間をかけてあげてください。
この記事では、菊花展ほどではなくても、来年も綺麗な花を咲かせられる簡単な方法をご紹介します。
植えっぱなしにするよりも、来年も綺麗な菊の花が咲くようになりますよ!
目次
菊は植えっぱなしにせず切り戻しを!綺麗に開花します
切り戻しとは、伸びすぎた茎や枝をばっさり切って、菊の姿形を整えることをいいます。
菊は植えっぱなしのままで切らなければ、ひょろひょろと背丈が伸びたまま成長してしまい倒れてきて姿が乱れてしまいます。
菊を切り戻しした方がよい理由
切り戻しした方が良い理由は、以下の通りです。
- 草丈が伸びすぎて倒れるのを防ぐ。
- 新芽や花の成長を促す。
- 風通しをよくして病害虫を防ぐ。
切り戻したあと、菊の株元をよく観察すると根元から、どんどん新芽が芽吹いているのが確認できます。
花を楽しんだ後は、株をバッサリ切り戻して地上部は新芽のみにしてしまいます。
この方法はただ切るだけなので、植えっぱなしにせず初心者でも簡単に行うことができます。
この時切り方は、地植えの株も鉢植えも思いっきり切ることがポイントです。
切り戻しの時期は5月末と梅雨明けどっち?!
菊の切り戻しの時期はいつなのか?
「一般的に知られている方法」と「知人の菊作り名人が実際にやっている方法」と両方を比べてみました。
比べてみると理由や切るタイミング、草丈サイズ、効果などほぼ意見が違います。
時期も1か月程ずれていますが、夏が終わった9月過ぎに花付きが増える、という結論は同じになりました。
植えっぱなしでは、花はそれほど増えないままだったでしょう。
一般的な方法 「皐月の切り戻し」
時期 | 5月末頃~6月初め |
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理由 | 茎が硬くなってくる |
タイミング |
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草丈サイズ | 10~20cmにまで切り戻す。 |
効果 | 幹が3本ぐらいに分かれて低く育つ。 |
開花 | 夏の終わりから9月末に先端の芽を摘むと、さらに枝分かれして花数が増える。 |
菊作り名人 「梅雨明けの切り戻し」
時期 | 梅雨明けした当日またはその翌日 |
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理由 |
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タイミング | 30℃を超す猛暑が続く時 |
草丈サイズ | 下2~3cm残して全部 |
効果 |
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開花 | 9月過ぎに高さが7~80cmになり、全部つぼみになると花もたくさん付く。 |
菊を摘心するだけ!初心者でも綺麗な形を維持できる
背丈が伸びた菊のお手入れには、摘芯という方法もあります。
摘心とは、芯と言われる芽の先端を摘み取る作業のこと。
先端の芽の部分を摘み取るだけなので、初心者でも簡単です。
摘心をすると良い理由は、以下の通り。
- 背丈が伸びるのを防ぐ。
- 脇芽が伸び、枝数も増える。
- 枝数が増え、花もたくさん付く。
特にトピアリー株などの形を整える時に行います。
小菊のトピアリーの整え方
小菊を用いて、球体やマスコットのシルエットに仕立てられたトピアリーをみかけることありますよね?!
とても綺麗な形をしていて芸術的ではありますが、植物ですのでだんだん成長していきます。
その成長した菊を何のお手入れもしなければ、伸びたい放題で形が崩れます。
最初と同じような形のままではいられないわけです。
菊に限らず多くの植物が、枝の先から伸びてきてそこに蕾を付けるので、摘心という作業をします。
摘心して根元から新たに伸ばした枝を、自分の理想の形に近づけていくのです。
ポイントは、苗の段階で茎の先端にある芽を摘み採ります。
こうすることでわき芽がたくさん伸びて枝数が増え、花の数も増えるというわけです。
枝が伸びて葉が5~6枚ついたら、ふたたび芽を摘み取ります。
この繰り返しでたくさんの花を咲かせながら、綺麗な姿を維持させていくことができます。
大菊の整え方
庭や畑に地植えされた菊でも、それが大菊でも中菊でも小菊でも同じです。
ポイントは、苗の段階で先端の芽を摘み、わき芽を3つだけ残します。
以降はわき芽を摘み採っていきます。
そして冬に落葉したら、株元から5~10cmあたりのところをハサミで切ります。
地面ギリギリのところで切ると、春から伸びる芽の数が減ってしまうかもしれませんので気をつけましょう。
菊の背が伸びすぎないために薬剤で調整する方法も
鉢植えで背丈が低かった菊は、実は矮化剤を使って育てています。
地植えにしたときも矮化剤を使用すれば、伸びすぎず倒れる心配がありません。
自立できる背丈を保つことができ、摘心する手間が省けます。
菊の冬至芽の植え替えと株分けであなたも上級者!
菊は植えっぱなしだと草丈が伸びて倒れ、花付きが悪くなるという事が分かりました。
切り戻しや摘心など、初心者でもできるひと手間で、翌年もたくさんの花を咲かせられることも分かりました。
本来なら、株元からでてきた冬至芽(新芽)を株分けしてまた別の場所に植え替えして上手に育てると株が大きくなります。
こうすると切り戻しや摘心だけより、もきれいに花が咲きます。
また挿し芽をした菊より背が高くなるので、切り花にちょうどいい大きさになります。
手間はかかりますが、もっと上手に綺麗な花をたくさん咲かせたいなら、冬至芽を植え替えして育てていきましょう!
次の花を咲かせる冬至芽とは?
冬至芽とは、花の終わった株の地下茎の周りから出てくる新芽のこと。
地中に残った根は冬至の頃、株を掘上げると、3~4センチに伸びた白くて先のとんがった芽がいくつも付いています。
冬至芽は見つけるのが簡単で、株分けや植え替えするときすぐに分かります。
冬至芽を上手に育てるには、ひと手間もふた手間もかかるので慣れていないと初心者には難しく感じるかもしれません。
冬至芽の植え替えをする
菊の植え替えのタイミングは、植え付けと同じ春~初夏の4~6月頃。
植え替えとは、冬至芽を植え替えることを指します。1~2年に1度の植え替えがおすすめです。
植え替えをする理由は、以下の通り。
- 株が大きく育つ。
- 花をたくさん楽しめる。
- 鉢植えの場合、根詰まり防止。
- 地植えの場合、病害虫を防ぐ。
鉢に植える場合
- 株分けした冬至芽は、ポットに仮り植えしておきます。
- 4週間程たったら、7号鉢に植え替えます。(5号の小さな鉢では根詰まりを起こすので大きめの7号鉢がベスト。)
- 鉢底が見えなくなる位に鉢底石を入れて、その上に深さ1/4まで土を入れます。
- 仮り植えした苗はポットから外して、根鉢の周りの土を軽く落とします。
- 苗がポットに植わっていたときの土の表面が、鉢の縁から3cmほど低くなるように高さを調節して、残りの土を入れます。
- 植えつけたあとで、鉢底から流れる水が透明になるまで、たっぷりと水を与えます。
- 水を与えて土が減るなら、土を足してもう一度水をたっぷり与えます。
- 植えつけ後、1週間は直射日光が当たらない場所で管理します。
- その後は明るい場所に移動させて育てていきます。
地植えで育てる場合
- 根元周りを掘って、根を傷つけないように株を丁寧に取り上げます。
- 日当たりがよく、水はけのよい場所に移します。
- 水はけがあまりよくない場所であれば、植え場所をよく耕します。
- 周りをブロックやレンガなどで囲って、土を入れて高植えにするとよいです。
- 複数の株を植える場合は、株と株の間隔を20~30cmあけて植え付けます。
冬至芽を株分けする
植え替えが面倒なら、せめて株を3~4つに分ける株分けをしましょう。
冬至芽がたくさんついている株は、かなり大きくなっていると思います。
若い株ほど良い花が咲くので、できるなら最初の株で株分けして違う場所に植え替えた方が良いでしょう。
【冬至芽の選び方!】根っこ近くの冬至芽よりも、離れた外側の方が強い傾向にあります。
【株分けする時期は?】毎年3~4月の春に株分けで株を更新します。
【株を丁寧に分ける】
- 株の外側から根元を傷つけないように、5cmから10cmくらい掘りおこします。
- 土を落としたら株の大きさにもよりますが、2~4つに分けます。
- 元気そうな冬至芽を探して切ります。
【株分けした後どこに植える?】
- 土の中にいた冬至芽は寒さ暑さに弱いので、植える場所には気を付けます。
- 適切な場所を見つけて、土を掘り返し穴をあけて水を入れます。
- 株分けした冬至芽を植えます。
菊が好む 場所 |
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NGな 場所 |
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菊の挿し芽で自家栽培成功!毎年綺麗に花を楽しむ
植えっぱなしでは、ある程度までしか花を楽しむことができません。
一般的には菊を毎年綺麗に楽しみたいなら、挿し芽での更新が良いとされています。
挿し芽とは、種から育てにくい植物に用いられる育成方法です。
伸びてきた菊の茎から簡単に増やすことができるのです。
挿し芽するのに良い時期は?
菊作り名人によると、理想は春に挿し芽をおこなうのが良いのだそうです。
ガーデンマムやスプレーマムなどの洋菊なら何もしなくても分岐して自然とドーム状になってくれるようです。
時期 | 5~6月頃 |
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サイズ |
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挿し水 | 2時間程度水につけて水を吸わせる。 |
ポット | 水を吸ったら、直径9cmのポットに植える。 |
使用する土 |
よく湿らせ挿し穂の葉の無い部分を挿す。 |
保管場所 | 風、雨、直射日光が当たらない場所で管理する。 |
水やり | 土の表面が乾ききる前に水を与える。 |
挿し芽が成功したかどうかは、ポットの鉢底穴から根が出てくるかどうかで判断します。
挿し穂を抜いて、ポットを動かしすぎるとうまく根が出ないことがあるので気をつけましょう!
種類によっては根をつけにくいものもあるので、「発根剤」を用いてもいいですね。
菊花展の菊は挿し芽選びから始まります
昨年11月に、橿原神宮外拝殿前広場で開催されていた「橿原菊花展」へ菊名人と行きました。
菊花展用の菊を育てるには、冬至芽を取り除く、摘心をしてはいけないなど、この記事の解説とは逆のことをして仕立てていきます。
独特の栽培法が求められ、ワンランク上の作り方になってきます。
展覧会によって審査基準は異なりますが、菊花展の菊のほとんどが挿し芽選びから始まります。
出来上がりをイメージして、挿し芽の大きさをそろえるため、ミリ単位できっちり育てなければなりません。
挿し芽を土に挿す時でさえも、土の硬さ、おさえ方にまで気を使います。
そうしなければ毛細管が働かないなどの理由で、生育が遅れ取り返しのつかないことになるそうです。
仕立て方も3本立ち花壇、懸崖、盆栽、ダルマ花壇、福助、銘花といった様々な部門があり競われます。
丹精込めて育てた菊花展の見事な菊は、とても素晴らしく立派でした。
名誉ある賞にふさわしい菊花展の見事な光景をみてしまうと、菊を植えっぱなしにしてしまうのは少しもったいないと思えてくるかもしれません。
菊花展は全国各地で開催されていますので、あなたもお近くの菊花展へぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか?!
まとめ
- 植えっぱなしにすると、花は咲くがだんだん花付きは悪くなる。
- 来年も綺麗な花を咲かせるには、切り戻しを必ず行う方が良い。
- 切り戻しの時期は、4~5月または梅雨明けすぐがベスト!
- トピアリーのように姿を整えるには、先端にできた穂の摘心をすると良い。
- 初心者は、切り戻しや摘心で管理すれば簡単です。
- 少し手間がかかるが、株分けして植え替えしたものが一番綺麗な花をたくさん咲かせる!
- 挿し芽での育成法は、もっと綺麗にたくさんの花を咲かせる上級者向け。
自宅にお仏壇がある方は、仏花が定期的に必要です。
自分で育てて毎年花を咲かせることができたら、コスパがとってもよいですよね!
私も春に菊の苗を購入して、名人のやり方で一度鉢植えから始めてみようと思います。